【コラム】スマートモニターに価値はあるか

コラム

自他ともに認める新しもの好きで、デジタルガジェット大好きなkurokiなのですが、未だにスマートモニターには手を出していません。

まだスマートモニターが開発中だった2022年から興味津々であったのですが、調査をして解像度が高まるにつれ、クルマのディスプレイオーディオ(以下DA)ほど便利じゃないって事実に気づいてしまいました。
むしろ、格安SIMを入れたサブスマホの方が、制約なく素直に使えちゃいます。カメラの故障だってサブスマホなら気にしなくていいですし。

つまり、スマートモニターを使う理由を見つけられないから手を出さなかった ってわけです。
とは言え、ずっと気にはなっているガジェットなので、情報を集めながら様子見をしています。この情報がわりと貯まったので、今回のコラムのネタにしてみましたw

DAとは

まず先に、スマートモニターの始祖であるクルマのDAについて、概要と歴史をおさえておきましょう!

DAは スマホの連動によって実現した高機能かつ低価格な車載ナビシステム です。
Apple CarPlay / Android Autoという仕組みによって、DA側でスマホのナビを動かしたり、スマホの音楽を再生することができます。
スマホに大きなディスプレイ、アンプ、スピーカーを外付けして、運転中でも安全に使えるようにしたものだと思ってください。

また、車載GPSや車速パルスなどの位置情報をスマホに連携して、ナビの精度を高めることも可能です。
これはスマホのナビ単体よりも優れていますね。

そんなDAが登場するまでの歴史を振り返ってみますと、その背景にはスマホの急速な発展がありました。

  • 2006年 iPhone登場
  • 2007年 Android登場
  • 2013年 iOS in the Car発表
  • 2014年 Apple CarPlayリリース
  • 2015年 Android Autoリリース

2013年には、スマホの地図アプリは便利に使えるものになっていました。必然的にクルマのナビとして利用する人たちも増えました。
そんなユーザーの活用方法を見たメーカーが、運転中でも安全にスマホを扱えるようにシステム化したのがApple CarPlay / Android Autoなのです。
iOS in the Carプロジェクト発表時のApple幹部のコメントが、その目的を端的に表現しています。

People already use iPhone in the car — we want to make that safer.
(人々はすでにクルマの中でiPhoneを使っている。我々はそれを安全にしたい。)

クルマメーカー側も「スマホをクルマに接続したい」という要望を強く受けていました。
車載ナビを進化させる方法もありましたが、スマホとの競争は勝ち目がなかったため、クルマメーカーはスマホと共存する方針に舵を切ったのです。

スマートモニターとは

スマートモニターは、バイク専用のDAです。
スマホをバイクに装着するとカメラが故障するトラブルが増えてきたことを追い風に、近年シェアを伸ばしている製品です。

ただし、クルマと比べて制約が多い環境で使うため、かなり限定的な仕様になっています。

  1. スマホの置き場所の制約
  2. 無線LAN 屋外使用の制約
  3. 水滴付着時の誤動作

これらについて、詳細を掘り下げていきましょう。

スマホの置き場所の制約

スマートモニター使用中は、スマホがWi-Fiアクセスポイントとなってスマートモニターと通信します。さらにスマホではモバイル通信、GPS通信、Bluetooth通信も同時に行われます。
スマホのバッテリー消費のツートップは、画面表示とデータ通信です。
スマートモニター使用中は、データ通信が頻繁かつ大量に行われるため、バッテリーをめっちゃ食います。ツーリングに使うなら給電は必須です。

さらに、スマホが通信で発熱するため、風通しのいい場所に置いて冷却したいところ。
ハンドルなどに装着するとよいのですが、振動による故障が懸念されます。
しかも、衛星からのGPSを受信しやすい場所にスマホを置かないと、位置情報の精度が下がってしまいます。

あっちを立てればこっちが立たない状況です。
実際には、故障の回避を優先して、ボディバッグなどに収納するケースが多いとか。

クルマでしたら、DAの近くにスマホを置くのが常套手段。USBケーブルでDAと接続すれば、充電もできますし、通信も高速になりますし、位置情報も車体から取得できます。
思った以上にDAとの格差は大きいですね。

無線LAN 屋外使用の制約

スマートモニターには、スマホの映像がストリーミングで送られます。つまり大量のデータ転送が行われます。
スマートモニターをサクサクとレスポンスよく動かすには、高速な5GHz帯のWi-Fiの利用が推奨されます。

しかし、日本の電波法では5GHz帯の屋外利用が規制されており、無条件で使用できません。具体的には、人工衛星や気象レーダーなどの公共の電波と干渉しないように、スマホ/スマートモニター側が通信を自粛したり、別の周波数帯に切り替えることが決められています。
つまり、日本の公道で使うなら、DFS対応済みのスマホ/スマートモニターが必須 です。対応していない製品を使うのは電波法違反です。

参考:知らずに電波法違反の100万円罰則、更には事故に繋がる可能性がありに注意!【バイク用スマートモニター】日本国内のWIFIに関するDFS技適取得が必須!!

そしてDFSの動作は、通信を始まる前に1分待ち、時々1分止まります。

  • 利用開始時
    • 利用する電波に干渉がないことを1分待ち、OKなら通信開始
  • 通信干渉の検知時
    • 別チャンネルに切り替え、そのチャネルで干渉がないことを1分待ち、OKなら通信再開

なお、2.4GHz帯のWi-Fiを使用すれば、DFSを回避できます。
しかし、2.4GHz帯は速度が遅い上に、Bluetoothと同じ周波数帯を使うため電波干渉します。時分割で干渉を回避する機能はありますが、速度低下は避けられません。
つまり、もっさりレスポンスになります。

スマートモニターとUSB接続すれば、通信は有線で行われるため、キビキビしたレスポンスが実現できますが、スマートモニターは無線前提で設計された製品です。
ここもDAとの格差が大きいところです。

水滴付着時の誤動作

スマホで使用されるタッチパネルには、静電容量方式が採用されています。指などの電気を通すものが触れると、その場所の静電容量の変化をセンサーが検知して、タッチ位置を特定します。
しかし、雨による水滴も電気を通すため、指のタッチだと誤認識した場合は変な動作をします。

スマートモニターの大半は静電容量方式タッチパネルですが、水滴をノイズとして処理するようにチューニングして水滴対策しているメーカーもあるそうです(Daytonaはそうだと中の人に聞きました)。
しかし、水滴に弱いという根本の性質は変わらないため、水滴のつき方によっては使えない可能性もあります。
スペックに記載されていないことが大半なので、使ってみなくては実用性能はわかりません。

クルマだったら室内利用なので、水滴の心配は考えずに済むんですけどね。

まとめ

現世代のスマートモニターは、かなり制約のあるガジェット です。
スマホのカメラの破損対策が一番わかりやすい訴求ポイントなのですが、カメラの破損を無視できるサブスマホの前では、その訴求ポイントを失います。
しかも、ナビと音楽プレイヤーしかできないスマートモニターと比べて、サブスマホは普通にスマホとして使えますから、便利さは比べ物になりません。

スマートモニターに残された訴求ポイントを順位付けしてみますと…

  1. 水滴が付着しても誤動作せずにタッチパネルが操作できる ※対策済み製品のみ
  2. 真夏の炎天下でも問題なく使用できる
  3. ドラレコ内蔵なら、狭い空間にドラレコ本体を押し込まずに済む
  4. バックモニター、タイヤ空気圧モニターなどの便利機能もある

ここに価値を感じられるかが、スマートモニター導入の分水嶺 になるでしょう。
また、据え置き型を導入する場合、バイクごとに導入しなければならない宿命も忘れてはいけません。現実的には段階的に導入することになるでしょう。

次世代に期待

今後、クルマのDAのように進化するならば、スマートモニターの魅力がグッと高まります。
例えば、車体側から車載GPSや車速パルスの位置情報が供給されるようになれば、スマホ単体よりも精度の高いナビが実現できます。
6GHz帯のWi-Fiに対応すれば、DSFの制約は避けられる上にキビキビ動きます。
車体側にスマホ収納ボックスを用意してボックス内でUSB接続するならば、レスポンスは高速ですし、給電の課題も解決です。

実現するにはバイクメーカー側が動く必要があります が、各社ともスマホとの連携を強化している過程なので、期待は持てます。
先行してクルマで実現されていることから、ユーザーから評価の高い要素を拾い上げて、バイクに実装していただきたいところ。
様々なハードルはありますが、クリアできたらきっと素晴らしい製品になることでしょう。

次世代のスマホモニターに期待しつつ、今後も情報収集を続けていきたいと思います。

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Posted by kuroki