MT-09 Y-AMT試乗記
最近、MTが熱い。
あ、MTとは我らがYAMAHA MTシリーズのことじゃなくて、
HONDA E-Clutchに次いでYAMAHAからY-AMTが発表されました。BMWからはAutomated Shift Assistant (ASA)が発表されましたし、KTMからもKTM AMTが発表されました。いずれもクラッチ操作とギアチェンジ操作を自動化する仕組みです。DCTに比べてシンプル・軽量ですし、CVTに比べてダイレクトな加速を感じられることでしょう。
バイクの世界にもクラッチ操作の自動化が、一気に普及する機運を感じます。時代の変化の潮目は、今このタイミングです。
テストライド
YSP杉並南に配備されたMT-09 Y-AMTの試乗車。
クラッチレバーが無いのが新鮮ですね。
また、手前に見える「+」ボタンでシフトアップできます。
シフトダウンは、この「-」ボタンで行います。
手前に引くのがシフトアップ、向こうへ押すのがシフトダウン。kuroki的には納得の配置です。
ボタン操作でシフトチェンジが行われるため、シフトペダルもありません。
能書きはさておき、試走してみましょう!
ですが…なんてこと無いはずの操作でつまづいてしまい、走り出せないのです。
最初はエンジンの始動につまづきます。ブレーキレバーを握りながらセルを回すことを教えられて始動に成功します。
次は発進でつまずきます。あれ?このままNから1に入れたらマズくない?と心理的ブレーキがかかるのです。「これはオートクラッチだ」と自分に言い聞かせ、「+」ボタンでシフトアップ。カコンと小気味よくシフトが入りますが、クラッチ無しでも当然エンストはしません。
ちなみにシフトパターンは「N-1-2-3-4-5-6」なので戸惑いましたが、考えてみると合理的。むしろ1と2の間になぜNがある?という長年の思いが解消されてスッキリ。
恐る恐るアクセルを開けていくと、何事もなく発進できます。
スルッと車速が乗っていき、自動的にカコン、カコンとシフトが変わっていきます。
発進するまではスクーター、発進してからは普通のバイク。
これらがミックスされた状態がなんとも新鮮です。
信号に差し掛かったのでアクセルをOFF。Y-AMTは見事なブリッピング・シフトダウンを決めてくれ、スムーズにエンブレしていきます。
停止状態になる寸前で1に入り、そのまま停車します。クリープ現象がないためブレーキで前進を抑えることなく、手や足を放したままアイドリングするMT-09。Nじゃなくていいのが不思議な感覚です。
信号が青になりました。再びアクセルを開けて発進します。
軽量な車体はグイグイ車速を上げていき、小気味よくシフトも上がっていきます。
試しに「-」ボタンでシフトダウン。グオンとエンジンの回転を合わせてシフトダウンが決まります。
再び「+」ボタンでシフトアップ。小気味よくスコンとシフトが変わります。
ほほぅ、これは見事なもんだ。しかもとても速い。一瞬でスパッと決まりますから、中の人のシフトワーク、マジで上手です。この
渋滞のクルマの列に並びます。そのままトロトロ走ってみると、ギクシャクすることなく実にスムーズなクラッチワークを見せてくれます。いい感じに粘る走行です。
しかも、足元でカコンカコンとシフトが変わるのが何とも楽しい。CVTじゃないんだMT車であるぞ!とマシンが主張してくるようです。
ちょっと路地に入ってみます。小走りのような速度で走るシーンになります。こういう道ではアクセルのON/OFFだけでやり過ごしたいのですが、自分の意思に反してカンッとシフトが変わってしまいます。
こういうシーンではMTモードに切り替えた方が違和感なく走れそうです。
10分ほどの市街地走行では自動シフト中心のレビューとなりましたが、かなり高いレベルで自動シフトを実現していることを実感できました。
今度はワインディングへ連れ出して、手動シフトをじっくりレビューしたいところです。
Y-AMTの操作説明動画です。詳細なことはこちらを見るとよくわかりますよ。
なお、Y-AMTはFJR1300ASに搭載されたYCC-Sの後継として開発されました。ざっくり言うと、YCC-SにATモードが追加されたものです。
YCC-Sの開発で得た長年のノウハウが活かされたY-AMTは、最初から無駄が削ぎ落とされたシンプルな仕組みになっています。クラッチレバーだけでなくシフトレバーまで取り除いたことは、これで大丈夫だとYAMAHA開発陣が確信を持っているのでしょう。YCC-Sユーザーから寄せられた数多くの意見は、開発陣の背中を力強く押す力になったはずです。
次世代ハンドルスイッチ
Y-AMTよりもですよ、変わってしまった操作体系にkurokiは戸惑いまくりでしたよ!
「次世代ハンドルスイッチ」なるものに。
新たに導入されたシーソー型のウインカースイッチ。
点滅を止める場合は、点滅している方向のスイッチを押します。真ん中のキャンセルボタンはありません。
- スイッチ半押しで3秒間点滅
- 15秒経過かつ150m走行で自動キャンセル
このような便利機能が付いていますので、慣れれば手放せなくなるんでしょうね。
ただ、ホーンとハザードが隣にあるのは違和感。間違ってホーンボタンを押してしまいそうですが…ハザードってそんなに使わないから、まぁいいのか。
ヘッドライトのHi/Lowスイッチは、パッシングスイッチと統合されました。
- 手前に引いてパッシング(従来通り)
- 奥に押し込んでハイビーム(New)
大変合理的なのですが、知らないと辛い。私は間違ってハイビームにしてしまい、それを消せないままでしたよw
ハンドル右側のスイッチはあっさりしてます。
- 走行モード切り替え
- スターター/キル
- AT/MT切り替え
新型TRACER9 GT+では、MODEスイッチの左下にグリップヒーターのコントロールボタンが追加されます。
左手側に機能を集中させること、今後を見据えて拡張スペースを確保しておきたいことなど、開発側の意図が感じられる配置です。
次世代ハンドルスイッチの開発ストーリー。ものすごくいろいろなことを考慮して、このデザインに落とし込んだことがわかります。
すべての機能をいったんバラして、本来の目的を吟味して、あるべきところに収めていく設計がなされています。
大変な開発だったと頭が下がる思いですが…慣れた操作体系が変わるのは誰しも戸惑うものです。時間と慣れが解決してくれるまでは、温かい目で見守りましょう。
それより我々ユーザーは、マニュアルを熟読してから乗り出すべきです。
まとめ
Y-AMTは今後のYAMAHA車の標準装備となり、普及していくと予想されます。その思いを抱けるほどシンプルで洗練された機構であり、ソフトウェアアップデートによって更なる精度向上が期待できます。今後の発展が楽しみです。
そして、我らがMT-10にもY-AMTが搭載されることを願っております。
絶対買い換えるので!